〜「第4回 多様性社会実現のためのまちづくり 〜外国人保護者の本音を聴いてみよう〜」
1月16日に(公財)鹿児島市国際交流財団と響の共催で「多様性社会実現のためのまちづくり 〜外国人保護者の本音を聴いてみよう〜」というテーマのもと、行政関係者の方々向けにワークショップを行いました。
今回は、バングラデシュ、アルゼンチン、中国、マレーシア出身の4名の外国人講師の方々と、日本人参加者15名の計19名での開催となりました。
初めにアイスブレイクとして、各グループで「やさしい日本語」を使った自己紹介をしました。「やさしい日本語」とは、日本語を母語としない方々にも分かりやすい簡単な日本語のことで、日本語を母国語として話す人達も考えて工夫をしながら自己紹介をしていました。
自己紹介後は、県内の「在留外国人」について、人数と国籍をクイズ形式で知ってもらいました。県内に住む外国人の方々の出身地は、知っているようで知りませんでした。増加する在留外国人の方々の数についてもクイズを通して認知することができました。
次に、「あなたとわたし」というワークを通し、「偏見」について考えました。このワークは、国籍問わず意見に共通点と相違点があることを感じてもらうものでした。この作業と自身の経験を用いた司会者二人のお話は、偏見が多様性の尊重を疎外していることを認識してもらうために行ないました。
その後、外国人講師の方々に日常生活や行政関係の手続き等における大変さと、求めているサポートについて、リアルな体験談を話していただきました。勇気を出して話してくださった外国人講師の方々には心より感謝いたします。振り絞って発した声による体験談に胸がいっぱいになりました。つらい経験や大変な思いをしたことを聞き、知ることで、これからの多様性社会を実現するための手立てとなるのではと思います。
一部ではありますが、外国人講師の方々の話を抜粋して紹介します。
〇バングラデシュ出身の方
・大学院進学で来日。教授からは「日本語の勉強より研究をたくさんやったほうがいい」と言われ、日本語の勉強はせずひたすら研究をしてきた。だが、大学院を卒業し入社すると、手続きを全部一人でやる必要があり、かつそれらが全て日本語であったため大変な思いをした。
・妻の妊娠・出産で困難な体験をした。どの病院がいいかもわからず、HPを見ても翻訳が不十分であったため、病院選びから戸惑った。病院窓口への電話や、病院の医療関係者とのコミュニケーションがうまくいかず不安な思いをした。大量の日本語書類や保険制度、コロナで病院に立ち入っていいのか等に戸惑った。
〇バングラデシュ出身の方のサポートをしたボランティアの方
・病院から大量に受け取ってきた書類や様々な同意書を医療通訳者と協力し、翻訳作業を行った。また、通院の付き添いをおこなった。可能な限りのサポートをしてきたが、サポート体制への反省点もあった。
〇アルゼンチン出身の方
・年金の手続きが複雑で難しかった。日本の社会保障制度は自国の制度と全然違うため、戸惑うこともあった。保険料納付の額にも驚かされた。
・日本の大学にいる時は大学や学生がサポートしてくれが、卒業したらサポートを受けられないため、すごく不安になった。今は友人や響のメンバーに助けてもらっているが、こういったサポートしてくれる団体があれば安心するし、外国人の定住にも繋がるのではと思う。
〇中国出身の方
・コミュニティの場で身に覚えのない体験をした。私はちゃんと伝えてほしかったし、それが優しさだと思っている。日本人はもっと優しくなってほしい、そうしたらもっともっと素晴らしくなる。
・日本人は中国人に対し、「きたない」、「中国人女性は日本人男性を騙す」というイメージをもっているため、「中国人ということがばれたくない」という子ども達がいた。すごくびっくりした。
〇マレーシア出身の方
友人30人にアンケート調査をした。
・一番困ったことは「多言語の書類がない」というもので、半数の人が回答していた。「外国語を話せるスタッフがいない」、「(申請等に)時間がかかる」といった声もあった。
・日本のゴミの分別の仕方や、たくさんある保険関係の書類の書き方等にたいし、多言語の書類や動画があればいいと思う。インターネットで書類申請ができたらいいなという声もあった。
外国人講師による困難体験談の後は、個別質問・交流の時間に移りました。この時間は、困難体験について詳しく聞きたいことや疑問に思っていたこと等について意見交換をするものでした。各グループ盛り上がっていたようで、時間が足りなかったようです。
最後のアクティビティとして、「みんなに優しいかごしま計画」というワークをしました。ワークショップや体験談、個別質問を通して優しい鹿児島にするためのアイディアをマインドマップ上に書き出しました。各グループが試行錯誤して制作したマインドマップを共有した後、振り返りを行ってワークショップが終了しました。
会場にいらっしゃった方々にとって、今回のイベントが有意義な時間になりましたら幸いです。お忙しい中、足を運んでいただきありがとうございました。
今回も含めた、全4回のワークショップを実施できたのは、参加してくださった皆様をはじめ、協力してくださった外国人講師の方々、共催してくださった(公財)鹿児島市国際交流財団のスタッフの方々、響のボランティアメンバーのおかげです。心より感謝申し上げます。
最後に、このイベントを発案・実施した、井手昭博と森康平の二人からの感想をもちまして今回の投稿をしめさせていただきます。
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井手昭博
10月からこれまでの4か月間、全部で計4回のワークショップを開催することができました。
「多様性を尊重したまちづくり」というテーマでしたが、各回とも年齢、性別、国籍、職業、経験などが多様な多くの人々が参加してくださいました。参加してくださる方々がいらっしゃらなければ、ワークショップを開催することもできません。興味を持っていただき参加してくださった方々に心から感謝しています。
そして、全4回で11名の外国人講師の方々に協力していただきました。母国に住む私たちにはわからない様々な困難経験を共有してくださったことで、どんなサポートが必要かを知ることができただけでなく、自らの考え方を改めるきっかけにもなり、大変貴重な機会になりました。また、第1〜3回のアクティビティで使用した資料も、現在鹿児島にいる、または以前鹿児島に住んでいた在留外国人の方々に協力していただいたものです。
また、ワークショップの企画や準備、宣伝、広報などを共に行ない協力してくださった鹿児島市国際交流財団の方々、響のボランティアメンバーにも感謝の気持ちでいっぱいです。
このように、本当に多様な多くの方々が協力してくださり開催することができたワークショップでした。今回のワークショップが現在鹿児島に住む、そしてこれから鹿児島に住む在留外国人の方々も含めた、すべての人たちにとって住みやすい鹿児島になる1つのきっかけとなったら幸いですし、今後もそのために自分ができることを探して取り組んでいきたいと思います。
4か月間、ワークショップに関わってくださったすべての方々に感謝しています。本当にありがとうございました。
森康平
”このトピックを取りあげてくれることが本当に有り難い。” その声を聞けただけでも、今回のイベントに関われてよかったと思いました。しかし同時に、この鹿児島にもまだまだ見えないところで苦しんでいる人たちがいるという事実が見過ごされていたんだな、とも感じました。寧ろ、僕にとって後者の方が強く心に残っています。そしてその事実に私たちが目を向けるきっかけとして、このイベントのような交流・対話の機会がもっと作れればと感じました。今回講師の方々が苦しかった体験を話してくださったことは、決して当たり前ではなく勇気のいる事だと思うので、とても感謝しています。そして関わってくださったすべての方にも感謝しています。ありがとうございました。
報告者 田中茉紀